新型コロナ法テラス特措法案要請の顛末

不思議なのは、日弁連の中の人たちはどうして何かにつけては法テラスの活動領域をむやみに拡大しようとするのか、ということである。

鎌田副会長と奥事務次長が5月21日に野党共同会派に要請を行った件は、前の記事でも述べたとおりである。

打越先生は「法的支援」の拡充という言葉を使っておられた。そこで、どのような要請があったのかメールでお尋ねしたところ、ご丁寧にもご本人から電話があった。「日弁連でオーソライズされている」要請だと思った、とおっしゃっていた。日弁連の相応の肩書の人が来て要請をしているのであるから、無理もないことであろう。わざわざお電話いただいたことにお礼を述べ、このような事態に巻き込んでいる点は大変申し訳ないとお伝えして謝った。

会期末を控えた6月12日、野党会派は、新型コロナ法テラス特措法を衆院に提出した。
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この法案では、資力要件として「収入の著しい減少があった者」という文言が入っているが、提出後の記者会見で階先生は次のように答えている。

階先生のお答えには個人事業主とか事業性という言葉が出てくるので、その方向に適用範囲を広げる意図なのだろうかとは思われた。

法案提出後、階先生は会期を延長をして本法案を審議してほしいと言って頑張っておられた。法案を取りまとめたお立場だから当然の態度である。結局、国会は6月17日限りにて閉会になったものの、この法案自体は閉会中審査に掛かっており廃案になったわけではない。

さて、ここで問題である。日弁連と称する人たちは、何を国会議員に要請しに行っていたのであろうか。

階先生のご発言を参照する。

階先生は間違ったことを言っていたわけではなかった。

6月19日の理事会では、野党会派に持って行った要請に関する資料が示された。それによると、日弁連と称する人たちが示した案は、東日本大震災の時の法テラス震災特例法が参考になるとしており、コロナに関係すれば「資力要件を対象外」とする内容だった。1

そもそも、震災特例法の時と同様の立法事実はあるのかという問題もさることながら、さすがにこれは人によって考え方が熾烈に対立する内容であろう。もちろん、その実現には法テラスの基盤整備が不可欠だとの認識もあったようではあるが、他方、大震災の時もみんな現場で頑張ったので今回も全国で頑張ってくれるだろう、という考えもあったとのことである。

見通しが甘いと言わざるを得ない。しかも、そのような要請が理事会に知らされてない状態でなされたことは間違いなかった。会長や事務総長は法律扶助を熟知しているから、正副会長限りの判断で要請しても後でみんな了解してくれると思ったのであろうか。そうであるとすれば、現場で代理援助を担当するジュディケア弁護士の法律扶助に対する認識との相違はおそらく著しく、深刻な事態であるように思った。

以上が、当職の理解した本件の顛末であった。

本稿が、本法案の賛否の問題、及び、連合会のガバナンスの在り方に関する今後の議論の参考となるのであれば幸甚である。

 


  1. 立替金の存在を前提とした書き方をしていたので、法律相談援助だけでなく代理援助を含む内容ということになる。なお、要請内容は他にもいくつかあり、その中には小規模事業者の法的支援(代理援助)というものも存在していた。これは思い付きレベルの案であり基盤整備を更に要するとの言い訳はあり得るが、到底看過できない内容であり別途独立して検討するに値する問題である。 

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