公聴会の応援演説(2024.1.19)

皆様お元気にお過ごしでしょうか。最近の私は余計なことをしないよう気をつけて暮らしておりますが、前からお引き受けしていたお仕事はきっちりやらないといけませんので、札幌の公聴会に出て及川智志候補の応援演説をしてきました。

そのままだと長すぎるので、要約及び意訳の上その他思うところを付記したものをここに残しておくことにしたいと思います。

はじめに

未来へつなぐとか言うけれど、つながっていたものも今ではすっかりつながってない。
具体的には、

  • 業界から志願者がはなれる
  • 法テラスがアレだから市民もはなれる
  • しまいには日弁連から会員がはなれる

弁護士の仕事には魅力がありまぁす!だとか自己アピールしてる場合ではない1。どうしてそうなったのか考えるほうが先だろう。

志願者がはなれている件

法科大学院は短縮コースと在学中受験の制度が導入され、一方で予備抜けも発生するなど制度がぐちゃぐちゃになった2。日弁連は制度変更に追従するのみだが、自分たちの仲間を育てる役割すら担えない業界団体に志願者が来ないのは当たり前だ。 そして弁護士になっても長時間労働・パワハラ・セクハラ等々の問題に苛まれる若手も少なくない3。法曹人口の問題も、自分たちが責任を持って育てられる後進の範囲はどの程度なのかという観点から考えていくべきである4。 

法テラスの利用が減っている件

一番の問題は法律扶助協会時代の基準を踏襲していることが時代に合わないことにある5。価格が低いなら供給が制約されるのは当たり前で、平成22年以降には代理援助件数はほぼ横ばいになり、令和の時代に入ったらむしろ減ってしまった6。手続面と費用面を併せて根本的に改善すべきだと日弁連は言い続けなければいけない。

日弁連の求心力が死んでいる件

旭川の人権大会でアイヌ民族の権利の保障を求める決議がなされた際、国際交流委員会の総意として反対だという意見が出た。自国内の人権問題なのに見える世界が全く違うのだろうと思った。死刑廃止の運動も、人の生命の処分をどうするかという究極的な人権擁護の問題を含むテーマなのに反対論を説得しきれていない7

法律家団体の本丸である人権課題についてすら様々に分散する会員の考えをまとめきれないまま積極的な行動を取ることができず、法律家団体としての弱体化につながっている8

つなぐのか変えるのか

志願者がはなれ、市民がはなれ、そして会員もはなれる。要するにみんなばらばらなのが日弁連の今の状況である。このような事態を変えようというのが及川氏の立場だと理解をしている。

宇都宮会長の時代を除けば副会長や事務総長の経験者が会長になっているが、前の人たちとつながる立場なら違うことを言ったりやったりするのは難しいだろう9。5~6回に1度くらいは視点が変わるような変化があることが必要だ10

及川氏を推すポイント3点
  • 実は一般の企業で務めていたことがある。
    法科大学院は社会人経験者の合格者を増やすことも目標としていたが、十分に達成できていない。及川氏ならその原因を身をもって分かると思う。よりシンプルな選抜を実施しより効果的に育成するという法曹養成の改善に向けて頑張ってくれるだろう。
  • 自分で法テラスの仕事をやっている。
    法テラスの仕事の問題点は実際に手掛けていないと実感できないところがある11。及川氏は自分でちゃんとやっているので制度を良い方向へ変えていけると思う。
  • 千葉の人である。
    日比谷の界隈からの眺めと松戸から江戸川の向こうに眺める大東京の姿は大いに違う。東京・大阪12以外から会長が選ばれても地方会の声が反映されたわけでもないし13、北海道出身の人が会長になったところで「人口が減っても法的需要が減るわけではない」などと言い出す始末なのでそんなこというなら地元に帰ってこい驚いた。広告系事務所による消費者被害の問題も目にするが、投げ出された依頼者をどうにかするのは地元の弁護士だ14。地方会の会長を務め、今も自ら市民のための業務に勤しむ及川氏なら、そのような問題にも対処できるだろう15
まとめ

及川氏は選挙に2回出て負けても継続的に日弁連を変えようという提言をし続けてきた。選挙の前だけ聞こえの良い政策を並べ立てて喉元すぎれば何とやらというような人たちとは違う。その粘り強さこそ日弁連の代表者たるべき人に要求されるべきパーソナリティである。皆様のご支援をお願いしたい。 

以上です。お役目を無事に終えることができてよかったです。余力があれば、今回の公聴会の感想についてもどこかで記そうかとは思います。

 


  1. いざ人が集まらなくなると、仕事の魅力を発信!地方の魅力を発信!なんて話になりがちですけど、そういうのはお為ごかしっていうんですよね。私は、是非この業界に来てくださいとは若い人に対して堂々と勧められるわけじゃないです。勧めるとすれば、良いことも悪いこともあるし悪いことの方が多いかもしれないけれどそれでもよければどうぞ、という程度にしておくべきかと思います。 

  2. こんなことになっていてもなお法科大学院はプロセスによる法曹養成の中核であるなんて強弁している人たちを見ると、プロセスって言葉の意味わかってるのかといいたくもなります。 

  3. 近時、民事訴訟等により実態が明らかにされた事案などを見ていると、どうしてこんなことになってしまうのかと何とも悲しい思いを抱くこともあります。 

  4. 及川候補の陣営ははっきり司法試験合格者数を1000人にしろと主張はしていますけど、私としては何人にしろという定見が必ずしもあるわけではないです。ただ、人数は増やしましたけど育成できないので放っておきます、というのではそりゃあ色々と問題も起こるわとしか思えないです。 

  5. みんなわかっているとは思いますけどね… 

  6. 代理援助の件数がどうなっているかという点は、毎年発行される法テラス白書を参照してもらうとよいと思います。弁護士の頭数だけ増えたところで代理援助の業務が拡大していく状況ではないということをどのように考えるかということになりますね。 

  7. 正直なことをいうと、割とがっかりしながら業界の状況は注視しています。噛み合った議論ができるのであればまだ良いですが、近年は人権の問題に言及するとお前は左翼かみたいなことを言う同業者すらしばしば見かけたりするので、一体何を勉強してきたのかとあきれることがあります。 

  8. 構成員の数が減ることはどうやってもしばらくなさそうなので、もはや抗し難い流れではあるんでしょうけど。 

  9. 「つなぐ」ってそういうことなんでしょうか。もちろん、会務に継続性があるということは重要なことではあると思いますが。 

  10. 今でも宇都宮会長の時代を蛇蝎のごとく嫌う意見もしばしば見かけます。いわゆる主流派を任ずる向きの人にとっては悪夢のような時代だったんでしょうけど、そういうことでもたまにあれば主流派も緊張感を持って政策に向き合うから組織全体としてのメリットはあるんじゃないですかね。 

  11. 会長になろうとする人が手間のかかる仕事を自分でやってる場合なのかという人もいるだろうが、むしろ、代理援助制度の理不尽ぶりについては、制度を推進している人たちが根底で自分たちの問題だと捉えていないところにあると思っている。 

  12. 大阪は地方です!との抗弁は断じて許さんし、そもそも歴代で大阪から出た人たちはろくなことをした試しがない。 

  13. 傀儡という言葉に親和的ですね。 

  14. バンバン広告打って客を集めてムリな任意整理を勧めて費用を巻き上げた挙げ句、やっぱムリなので地元の弁護士に法テラスで破産してもらってください、みたいな事案を見ることが多くなっている気がするんですが、これってマジで消費者被害の問題ですよ。金返してくれ。 

  15. まあ、こればっかりは誰が会長になっても対処してもらわなきゃ困りますが。もはや、広告打って顧客取るのは自由競争でしょって開き直れるレベルの話じゃないんですよ。本当にいい加減にしやがれという感じですね。 

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