行政活動とのかかわり(1)町村会政策法務研修

行政活動と弁護士の関わり合いということがクローズアップされる来るようになってきている昨今なんですが、実際に当会からも自治体インハウスに転職する人が現れるようにもなりました1

そっちの方面では何もやってないようにも思ったのですが、よく思い出してみると必ずしもそうでもないようです。奥ゆかしい当職としては割とひっそりやってた感じです。

そこで、当地の弁護士の活動の一端を知っていただく趣旨にて、以前行われた北海道町村会2主催の職員研修(政策法務研修)で担当した内容についてご紹介いたします。

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十勝総合振興局へ行き、次のような問題の解説を行いました。

「刑事訴訟法等に基づく照会について」

本町では、個人情報の利用目的以外の利用・提供を原則として禁止し、「本人の同意があるとき。」や「法令等に基づくとき。」といった場合には、その禁止の適用を除外しています。

そこで、本人の同意がない個人情報について、次の(1)?(3)に基づく照会があった場合、当該情報を提供することは可能か。ただし、このことは条例等の解釈によるが、例えば「法令等に基づくとき。」であるかを考える場合、どのような根拠に基づき判断すべきか。
(1)刑事訴訟法第197条第2項に基づく照会(捜査に必要な照会)
(2)民事訴訟法第186 条に基づく照会(調査の嘱託)
(3)弁護士法第23条の2に基づく照会(弁護士会照会)

これらの照会が「法令等に基づくとき。」であったとして、例えば「裁判等に直接関係しない第三者の個人情報」の提供を求められた場合でも、当該情報を提供することは可能か。

これらの照会による個人情報の使用法等に疑義が生じる場合に、照会元に対し、「第三者の本人同意」を得るように、役場から要請することは可能か。

詳しい解説は北海道町村会ウェブサイト(PDF)に掲載されています。

町村会の政策法務研修は他の地域でも行われていますが、最近は空き家対策などが自治体の業務上はホットな話題としてあるようです。

上記の問題の一般的な結論として、「法令に基づく」といってしまえばそれまでなんですが、特に弁護士法上の照会に関しては、なかなかややこしい問題があります。例えばそういったこともありますから、自治体等にインハウスがいて迅速な対応ができるようになれば有益なことなのでしょう。

私の行った解説の中でも、弁護士会照会が来た場合に調査対象者の同意を求めて良いかという部分は色々考えどころです。当然ながら弁護士会サイドではそのような求めは原則認められないという見解です。ただ、私は、お願いしても結構だが普通は拒絶されるから結局は実質的な判断をするしかないよ、といったニュアンスの説明をしていますので、弁護士会サイドから怒られるかもしれません。

このような活動も通じて、行政職員の法的スキルの向上に役立つことも(たまには)やっていますので、とりあえずご紹介しました。行政とのかかわりでは他にもいくつか話題はありますので、別の機会に続けて書くことにしたいと思います。


  1. 但し、釧路弁護士会の管内では、まだ自治体インハウスは居ないようである。 

  2. なお、念のため、北海道で町村というと「まちむら」と読みそうな雰囲気があるが、これは「ちょうそんかい」と読む団体であり、北海道内144の町と村で構成されている。 

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