会長落第記(5)

法曹人口の検証

法曹養成のことについては前の記事で多少述べたが、法曹人口をどうするかという問題も広い意味では法曹養成の問題に含まれてくるテーマでもある。

法曹人口の問題について検証するということは、会長選のときの公約に掲げられていた。実際、それを踏まえて、法曹人口検証本部が設置された。現会長肝煎りともいうべき政策である。

問題点

ただ、この点についても、立ち上がりから何だかごたごたしていたことがあったので、以前の記事で色々と指摘をしている。興味があればご覧いただきたい。

そこで、理事会での議論は実際はどのようになされたかということについて、少し述べておくことにしたい。念のためいっておくと、以下、理事会の議事録を見ればわかるようなことに基づいて、私の感想を述べているものに過ぎない。

理事会では、法曹養成制度改革実現本部の会議と併せて法曹人口検証本部の中の人が説明をする機会があった。両本部はメンバーの相当数が重複しており便宜ということかとは思った。

さて、法曹人口検証本部には自分の会は委員を出せていないので、意見を伝えることができるのは理事会の機会のみである。それで、私も、事前に送付される議事の要旨を隅々まで読んで、おかしな議論になっていないか確認をして、質問をしたり意見を申し上げていた。しかし、理事会は数多くの議案を処理するため非常に時間が限られる。そういうことで、理事会に報告が上がってきても、実際のところ議論できる余地はそう多くはなかった。

また、理事会内での説明を受けても、結局、議論の方向性が誘導的であるという印象は受けた。しかも、その印象は、回を重ねるにつれて強くなった。期待されている方向性はあるのだろうから、予定調和的な検証をしているのであろうということを思った。

ところで、検証本部の議事については結論が出るまでSNS等で公開するなというお達しがあったことは以前も指摘したが、法曹養成や法曹人口の問題というのは、法科大学院にしても司法試験にしても法令で規律される事柄である。だから、それに関連する情報を流すなというのでは民主主義の過程の健全性に関わる問題である。それが総本山内部の議論であるとしても、法令を通じて国民一般に関わるのだから、公明正大な議論を期するべきであろう。そのあたりの事柄の性質を無視して、権威主義的秘密主義的な会務運営に邁進しているというのでは、人権擁護の殿堂たる総本山におよそふさわしくない所業である。そのことは繰り返し申し上げておかなければならない。

回想

法曹養成とか法曹人口の問題については、私も意見を述べる機会はあった。

例えば、令和2年の司法試験の合格者数は1450人であり、旧司法試験時代である平成16年の1483人を下回ってしまった。合格者が旧制度より減ってしまった上にその中には法科大学院の過程を経ていない人も多数含むというのではこの16年間一体何をやっていたというのか、政策目標を達せなかったのだからそろそろ法科大学院は法曹養成の中核とする立場も見直したらどうか、などと言ったりしていた。今の制度を構築するのに苦労した人はいるのだろうけど、そういう数字が出てしまってはそれが普通の感想ではないかと思っている。

また、法曹の需要があるという根拠として、弁護士保険、法テラス、訴訟件数の増加、中小企業法務、地域司法、インハウスとか色々な要素が出てきたので、インハウスはまあ良いとしてもそれ以外の点についてそういうものは需要とは言わねえんだよ実情を見ろ、ということを自分の体験を踏まえて反論していたところ、つい言い過ぎて、時間が押してるからそろそろまとめろみたいなことを言われたりしてしまったこともあった。

馬の耳に念仏とまではいわないけれども、糠に釘とか暖簾に腕押しというのはこういうことなんだろうかと思った。

大予言

おそらく、例の検証本部による検証結果としては、「法曹需要は堅調である。法曹の質は下がってない。法科大学院は維持すべき。法曹人口減員には慎重であるべき。」という予定調和的なものが出るのだろうと予想している。今まで積み重ねてきたことは間違っていましたとはなかなか言い出しにくい以上、現実には色々な問題が大噴出しているのだとしても、そこは目を瞑ってそういう結論に至るしかない。

ただ、この問題については、見える景色が人によって違うのもまた当然である。だから、それぞれ考えてみるとよいテーマであるかと思う。私も、今年度内に結果が出たら、答え合わせをしたいと思っている。

(つづく)

 

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