本当にやるのか?日弁連定期総会の延期について

7月の日弁連理事会に出るために東京に行ってきた。

先月の理事会を経て感じたこととしては、テレビ画面に向かって何か言ってるのでは意思疎通がなかなか難しい面もあるかもしれぬ、ということであった。東京の感染者数も増えつつあるとは聞こえてきたものの、これでは仕方がないということで2日間会議に出てきた。

ただ、色々と質問はしてみたものの、糠に釘、豆腐にかすがい、あるいは暖簾に腕押し、といったところで、手ごたえがある感じがしなかったのもまた事実である。

まさかの出来事

さて、そういうことで2日間にわたる会議も終わって、ふらふらと日比谷公園を横断して宿に戻ってくると、ほどなくして連絡があった。事務総長が抗原検査に引っかかったということだった。

実は、総長が2日目の会議を欠席をしていたことには気が付かなかった。そういわれてみれば確かにいなかったかもしれない。

総長の席は私の席とは離れた場所ではあったので、一応濃厚接触者の定義には当たっていないであろうとは確認したものの、困ったことになったとは思った。急に発熱でもしたら飛行機で帰れなくなってしまうかもしれない。

幸い、翌日朝起きたら何ともなく北海道に戻ってくることはできた。とはいえ、当地の検査体制としては、症状が出たら保健所に問い合わせろという程度のものであるから、心配だから念のため検査できるというのでもない。

今のところ健康状態には変化はないが、やはり、たまたま遠い出先で何かが起こると、今の社会情勢では詰んでしまう状況であるということを期せずして体感することになった。

定期総会の延期

さすがに、7月31日に予定されていた定期総会は、とりあえず延期される方向となるようである。まずは、総長の快復を祈念するほかはない。

問題は総会をどうやるか、という点である。

総長が新型コロナウイルスに感染していたという事実からすると、会館内で感染予防に十分な注意を払っていても予防には足りないということになる。また、会長、副会長、次長及び一部の職員らはPCR検査を受けて全員陰性であったとのことではあるが、検査精度の問題から偽陰性の者を含んでいる可能性もある。さらに、弁護士会館は地下に飲食店も入っているから、飲食時の濃厚接触の機会も発生しやすい。

このように色々考えていくと、行かなくて済むならしばらく弁護士会館には行かない方が良い、ということになる。そして、少々延期したところで感染状況が収束しているかどうか見通せないことを考えると、やはり、全国から弁護士会館に人を集めて総会を開催するのはとりあえず止めておけ、と考えるのが自然である。

オンライン開催の是非

そもそも、総長の罹患が判明する前の時点で、テレビ会議システムを利用して総会を開催したらいいという意見は、理事会でも地方会の理事から出ていた(この点はずいぶん紛糾した)。しかし、執行部の見解としては、通信途絶の場合の対処や票数の確認が難しいため、法的安定性を確保する観点からテレビ会議システムの利用は難しい、というようなことであった。

本当にそうなのだろうか?

日弁連と各弁護士会をつなげているテレビ会議システムは専用機器を使用した安定性の高いものであり、通信途絶のおそれ自体は小さいと思われる。少なくとも、これまで使用していた際に通信障害が発生した記憶はない。

また、大多数の会員の投票内容は、委任状の確認により事前に済んでいるはずであるから、票数の確認はそんなに困難とは思われない。会長選挙のように各地で確認した投票を集計するという方法も採り得るであろう。その上で、議案を出来るだけ論争性の少ないものに差し替える等の工夫をすれば、総会が紛糾して成立しないリスクも減らせるはずである。

執行部の見解は、危急時であることへの配慮が十分ではなく、あえて法的安定性に拘り過ぎている嫌いがあるように思う。

会務執行の正統性を問う

今の状況が続くのであれば、さすがに地方から東京に行くのは躊躇される(なお、東京三会の人が弁護士会館に集まることも躊躇されると思う。)。そこで、総会でも、テレビ会議システムを活用して可能な限り人を分散させることが望ましい。しかし、そのあたりの工夫を何としても行おうとする雰囲気はなかなか伝わってこない。

いずれ感染症の流行が収まれば良いとしても、そうでない状態で総会が実施されることになれば、多くの地方会が投票に行かないまま決議に至ることとなる。さすがにそれでは会務執行の正統性が担保できないであろう。

乱暴な言い方をしてしまえば「参加できなかった決議に基づいて何かやってもワシらはお前らの言うことなんか絶対聞かんでいつまでも文句言い続けてやるからな」となる。そのような不平を容易に招く方法に依ってはいけない。

そこで、このような例外極まりない状況であるからこそ、多くの会員の意思が可能な限り反映される形での総会が開催されることを願っている。そして、それは技術的にも全く不可能な状況ではなくなっているのであるから、冒頭で述べたようにテレビ会議特有の課題はあるとはいえ、何とか知恵を出して乗り切るべきである。

 

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