臨時総会多事争論

平成28年3月11日に開催される日弁連臨時総会について、いろいろ意見が出てきていますので、議論の参考となるようにまとめておくことにいたします。

当サイトの記事

当職が書いたものは次のとおりです。

司法制度改革を問い直す 日弁連臨時総会への対応について
藤本案を考える 日弁連臨時総会への対応について
執行部案の問題点 日弁連臨時総会への対応について

当職は招集請求をした側の一人でありますので招集請求者側の議案に賛成しますが、ただ、その提案理由については必ずしも異論がないという訳ではありません。

特に、いわゆる「弁護士食ってけない論」に関しては、自分たちのために主張するのでは社会の支持は得られないのであろうという気がしています。法科大学院が自らの生き残りのために予備試験を制限しろと主張するのと同じようなもんです。それだけに、司法制度の問題、特に司法試験合格者数をどうするかという問題に関しては、それがどうして弁護士業界の問題に留まらないのか、ということをしっかり検討した上で意見を固めることが重要であると思っています。

なお、日弁連執行部の提案を支持して欲しいとの呼びかけがFAXニュースや日弁連新聞で次々となされていますが、これに対しては招集請求者案を支持する側からは勿論のこと、そうでない人たちからも結構な反発があるように見受けられます。

日弁連ニュースを執行部意見の宣伝に使うな その1
3.11②
執行部に反対するのは『非良識』と公式に述べる団体が『自治』というのは・・・
くっだらない日弁連ニュースはもうやめたら?

執行部の考えが正しい意見だというのであれば正々堂々と議論をなすべきでしょうし、そうでないなら過ちを正すべきことです。

執行部案反対の動き

一部の単位会では、会を挙げて執行部案に反対するという意見も見られます。千葉県弁護士会がそのようです。なお、その後、埼玉、群馬、栃木県、山形は単位会として執行部案に反対、兵庫県はいずれの議案も棄権すると聞こえてきています(総会では各単位会にも1票分の投票権があります)。

日弁連執行部の「基本方針」に対する意見(PDF)

単位会の機関決定を経てここまで踏み込んだ意見を出したのだとすると衝撃的な出来事です。といいますのも、千葉県弁護士会は会員数700人を超える弁護士会ですからそれ程小さな会ではない上(人数的には札幌と同じ規模です)、地元の千葉大学にはロースクールだってあるからです。

外から見た印象に過ぎませんが、関東地方では東京の三弁護士会とそれ以外の弁護士会では、司法制度改革、とりわけ司法試験合格者の増員の問題に関してはかなりの温度差があるように感じます。もしかしたら、東京以外の関東地区は東京に弁護士が集中しているあおりをもろに食っている、という側面があるような気がしてきました。例えば、私は高校を出るまでは埼玉の吉見町というところに住んでいたのですが(管轄の裁判所はさいたま地裁熊谷支部です)、1時間程度で池袋に行けますから、ちょっと東京まで行って有名な事務所に相談しようかしらなんて思わなくもないですからね。

藤本案について

そして、第三案を出した藤本一郎先生の意見については次のとおりです。

明日の臨時総会について
第三案関連Q&A
第三案を提案します。
日弁連臨時総会・・・

これに賛同する意見も出て来るようになりました。

3月11日の臨時総会「第三案」

もちろん藤本案に対する反対の意見もあります。

3.11日弁連臨時総会 藤本先生案に対する表敬と自分の意見
3月11日・日弁連臨時総会の執行部議案について3

藤本先生の意見は、給費制の点を除いて当職としては賛同はできないのですが、その反響は大変大きいように感じられます。

これは藤本先生の人徳ということもあると思いますが、やはり、日弁連執行部の今回の提案はおかしいという視点を持って、筋を通して司法制度改革のあり方を考えようとご提案をされたことに、多くの弁護士が関心を持っているということだと思いますし、共感する方も多いのであろうと捉えています。

立場が矛盾するようですが、私としては、この案の賛同者が修正動議を出せる程度に集まり、臨時総会でも正面から法曹人口に関する議論がなされることを期待します。私自身も、藤本先生がこういうご提案をされるのだとすると、果たして法曹の需要というものを自分はきちんと捉えているのであろうかとか、何か新しく社会の役に立つことでも自分は出来たりしないのであろうか、といった感を持つところはあります。

臨時総会の開催に反対

ところで、臨時総会そのものの開催に反対であるという意見もありますのでここで紹介します。

札幌弁護士会の猪野亨先生のご意見です。

日弁連臨時総会 執行部案の問題点
日弁連臨時総会 招集請求者案を批判する その2
鈴木一派の決議案と日弁連執行部の決議案の違いはあるの? 違うという説明は歪曲にしか聞こえない
鈴木秀幸氏の珍論 自民党議員は司法試験合格者数1,000人以下で同意している、妨害しているのは日弁連執行部!?
司法試験合格者数の減員運動を分裂、妨害することだけを目的とした鈴木秀幸氏を批判する
日弁連臨時総会請求者たちの決議案 鈴木秀幸氏に問う、これって本当に日弁連であげろっていう決議ですか

札幌弁護士会の複数の先生方からは、臨時総会の招集そのものに反対である、との通知が昨年の12月1日に来ていました。確かに、札幌の先生方は地方議会での理解を得ようとしたりであるとか、司法試験合格者数に関する活動を地道にしてきたところですので、唐突にも思われる臨時総会の開催には異論を持つところではあるのでしょう。

私としては、猪野先生の計らいもあって、昨年の道弁連大会では法曹人口の問題について若干の意見を述べさせて頂いたということもあり(即身仏理論)、札幌での動きは複雑な思いを持って見ておりますが、まだ活動の成果が十分ではない、あるいは議論が熟していないという点については、そのような側面も感じない訳ではありません。

なお、いずれの議案も否決すべきとの意見も出てきました。この問題について意見表明をすること自体にデメリットがあるという見方のようです。

3.11
3.11③

日弁連執行部案

日弁連執行部提案に積極的な賛成であるという意見は、私の探し方が悪いのか、理由を明快に示しているものは良く見あたりません。自分で総本山からFAXニュースを流して随時アピールしているので取り立てて擁護しようとする人も少ないのでしょう。皆様のお手元に配布される臨時総会議案書をそれぞれご確認頂くしかないと思います。

せいぜい、東弁の会長が執行部案に賛成する呼びかけをしているのが目に付くくらいです。

新年に誓う

しかし、これも、「会員の皆さまには、日弁連執行部提案の議案への賛成と、一部の少数の招集請求者の議案への反対をお願い致します。」「一方、この方針に真っ向から反する一部の弁護士から提出された日弁連総会請求については冒頭に述べた通りです。皆さまの良識ある対応をお願いします。」ということで、一部の少数の招集請求者は良識がない、と言わんばかりのものですから、天下の東京弁護士会の会長が新年に誓うに相応しいものか、という感を持たざるを得ません。

その後、60期代の人たちには執行部案への賛成を呼びかける文書の送付があったようです。

こんなファクスがきたよ=日弁連執行部案のアピールですね
執行部案賛成派からファックス

この内容を見ますと、法科大学院を廃止することにつながるのが何故いけないのか分からないし、廃止された旧制度を復活させるだけの主張をするのが何故いけないのか分からないし、何故1500人が許容できるのか分かりません。あえて苦言を申し上げますが、60期代の分析能力とか起案能力がそんなものだと見透かされるのを恐れて、それ以前の期の弁護士には送付しなかったということでしょうか。それとも、そんな根本的な能力は無視してとりあえずアピールしておけという能力を磨くのが(この種のFAXにしては見やすいという点だけは唯一評価できる)、この世代への教育の成果ということなんでしょうか。

若手会員の声ということであれば大いに結構なんですが、もう若手と自称するのも憚られるようになってしまった当職としては、ただただ、無批判に執行部提案に従うことを旨とするような活動が現れ出したことに大変な絶望感を持たざるを得ない状況です。

日弁連執行部案に批判的な立場からの意見としては、次のような記事があります。

3月11日・日弁連臨時総会の執行部議案について
3月11日・日弁連臨時総会の執行部議案について2
3.11日弁連臨時総会 執行部案の問題

第4案の登場

そして更には第4案が現れました。第二東京弁護士会の遠藤直哉先生によるものだということですが、その呼びかけ文である「【日本弁護士連合会臨時総会 第4案】 ?国民に役立つ法律関連士業の一元化30年計画」(PDF)によると次のような内容です。

(原議案第1項に関連して)
司法試験の年間合格者の上位約1500人に法曹資格を付与し、下位約1500人に隣接士業(税理士、弁理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士)の資格を付与し、総合格率を9割程度とする法整備をすること(暫定措置であり、30年後に隣接士業をすべて弁護士に一元化すること)。

(原議案第2及び第3項に関連して)
法学部を改廃し、法科大学院3年間の高度かつ厳格な教育を徹底させ、学部2年または3年からの法科大学院入学を約3割認め、予備試験を廃止し、司法修習の廃止と2年研修弁護士制度などの採用により研修中の経済的負担を解消し、かつ日本型ミニ法曹一元を実現するなどの法整備をすること。

さすがにちょっとこれは…想像を絶する提案です。このような内容では隣接士業からの強い非難は避けられないでしょうし、余計に司法の人的基盤を破壊しそうです。修正案を提案できるほどの賛同者は出ないと予想します。

以上、ひとまず参考になりそうなものをまとめてリンクを貼りました(随時更新します)。

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