城跡と裁判所(21)名古屋高等裁判所

名古屋というと、偉大なる田舎とか日本一つまらない街だとか何かとひどいいわれ方をされているのを聞いたりすることもあるのですが、私から見れば超絶的都会です。久々に名古屋駅に降り立った私はその益々の発展振りにめまいを感じました。

名古屋の現在の裁判所も、名古屋城のそばにあります。

もっとも、名古屋の一番の見どころは旧名古屋控訴院の建物を活用した市政資料館にあると思われますので、今回はこの資料館を中心にご紹介したいと思います。

この資料館は、裁判に関する展示がかなり充実しています。

明治憲法下の刑事法廷です。法壇の上に5人いますが、これは向かって左から検事、判事3人と裁判所書記という構成です。検事が判事と一緒に法壇にいる形になっており、糾問的な訴訟構造を見ることができます1

戦前の陪審法廷です。戦前の一時期には陪審制が採用されていたことがあり、そのころの法廷の再現ということになります2。検事席は法壇に向かって左側に分離しています。

日本国憲法下の法廷の再現です。検察官と弁護人が向き合う形となり、いわゆる当事者主義的構造が法廷にも反映されていると見ることができるということになるでしょうか。

こうして見ると、法廷のあり方の変遷が良く見て取れますので、大変勉強になります。

これは控訴院の会議室ですが、随分と優雅な雰囲気です。

ということで、「市政」資料館という名前に気を取られて、どうせ名古屋の市政なんか勉強しても面白くないと思っていたら大変な間違いで、見どころ十分な資料館でした(しかも入場無料です)。このような形で裁判の歴史をしっかり辿ることができるように整備しているとは、名古屋市もなかなかのものです。

この資料館は名古屋城の近くにありますので、お城のみならずこちらを見学するのも大変お薦めです。


  1. 裁判所構成法の下における法廷については、園尾隆司『民事訴訟・執行・破産の近現代史』(2009、弘文堂)231頁以下に詳しい解説がある。 

  2. 陪審法の制定と陪審法廷については、前掲260頁以下に詳しい解説がある。 

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