平成26年の司法試験の合格者数は、前年に比べて239人減少し1810人となりました。なぜこのような減員が生じたかということについては各方面で議論がなされています。
そうしたところ、釧路弁護士会のある先生から「どうやら、足切りを受けなかった人の合格率はそんなに変わっていないというデータがあるようだから、分析してみたらどうだ?」という示唆を頂いたので、ちょっと考えてみることにしました。
これは人数に着目したグラフです。なお、「総合評価対象者」は択一及び論文試験の最低基準をクリアした人数、「論文最低ライン未満者」は論文試験のいずれかの科目の得点が25%に達しなかった人の数です。
平成26年の受験者数が増えたのは、受験制限が緩和されることになり、受け控えが減ったことによるのは衆目一致するところかと思います。
平成26年の論文最低ライン未満者の数が684人と相当多数に上ったのには、改めて驚かされます。しかも、経年の推移を追うと、論文最低ラインに達しなかった人数は増加傾向にあり、一方で、総合評価対象者の数は平成22年をピークに毎年減少しています。
こちらは割合に着目したグラフです。
平成26年は合格者数が239人減少し、合格率も22.58%と過去最低となりました。仮に、前年と同様の人数(2049人)を合格させた場合の合格率は25.56%となり、過去5年の平均(25.68%)とさほど遜色ないことから、司法試験委員会が前年と同様の人数を合格させるつもりならそれでも良かったはずです。
一方、平成26年の総合評価対象者数に対する合格者数の割合は41.17%であり、この割合の過去5年の平均(41.03%)と非常に近似します。平成26年の最低合格点は770点でしたが、実は、この点数で最低合格点を決めると、この割合の過去5年の平均に最も近似します(法務省の総合評価を参照)。仮に、平成26年に前年と同様の人数(2049人)を合格させた場合には、この割合は46.61%となってしまい、過去5年との比較では突出した数字となります。
こうしてみると、司法試験受験者層の学力は平均的に低下し続けている恐れは否定できません。そのことは、総合評価対象者の絶対数が年々減少していることから裏付けられます。
そして、司法試験委員会は、前年と同様の人数を合格させると、司法試験の学力選抜機能が低下することを危惧したように思われます。今年の場合、2000人以上の合格者を出すと平均点に程近い得点で合格できる緩い試験になってしまいます。故に、合格者数の決定に当たっては、過去の総合評価対象者数に対する合格者数の割合を考慮せざるを得なかったのではないか、と推測されます。
いずれにしても、今や司法試験合格者数の決定要因として「受験者層の学力」が強く考慮されている可能性があります。弁護士業界の求めに応じて減員が実現した訳でもなさそうなので、色々な意味で残念です。もっとも、専門職を志す人の学力が平均的に低下しているとすれば重大な問題であり、弁護士業界に止まらず社会において真剣に考えるべき問題だと思います。
なお、以上は統計に基づく考察で、個別の司法試験受験者や合格者のレベルが低いという趣旨ではありません。時代を問わず、優れた人は一層才能を発揮し、そうでない人は一層努力すれば良いのだと思います。