平成28年5月16日の北海道新聞に次のような記事1がありました。
経営者の高齢化や後継者が見つからないといった理由で企業の廃業が相次いでいる問題を受け、日本政策投資銀行(政投銀)や日本銀行、地銀などは、道内企業の事業再生や合併・買収(M&A)など事業承継の手法を研究し、共有する新組織を立ち上げる。企業再生を担う実務者がネットワークをつくって企業の存続を後押しすることで、地域の活性化につなげる。
そのような動きもあるのか、と思っていたところ、発起人の一人となった先生からご案内をいただきましたので、5月28日の発足式に行って来ました2。
北海道金融法務シンポジウム
発足を記念して、一橋大学の山本和彦教授により「事業再生の最近の潮流」というタイトルでの講演会が行われ、事業再生と多数決、また、事業再生におけるスポンサー選定、という話題についてお話しいただきました。
特に、事業を引き受けてもらう先をどのような基準で決めるべきか、という問題は確かに管財人の業務などをしていると悩ましいところです。スポンサーが複数現れて厳しく競合するような事態は多くないとはいえ、公正な選定をすることは重要ですので、理論面での知見を得られて大変参考になりました。
研究会の趣旨
冒頭の北海道新聞の記事によると、このような問題意識があるようです。
企業の再建手法はM&Aや法的・私的整理などさまざまだが、道内ではすべてに精通した人材は限られる。首都圏に比べると情報共有は遅れており「実務の課題と解決策を明らかにし、蓄積できる協力体制を築くべきだ」(発起人の1人の杉本芳浩・日銀札幌支店長)との声が高まった。
金融法務、というと直接縁のない世界のような気もしたのですが、実際上は事業者側に立って金融機関とは対立する立場でのご縁(?)であれば少なくはありません。
ただ、事業の再生を図っていく方向での仕事を取り扱う機会はそう多いとは限りませんので、なかなか個々の弁護士や事務所単位でノウハウが蓄積されてこないところはあります。そうすると、このような研究会に出て技能の強化を図るということもなお必要であろう、という思いはあるところです。
ということで、研究会の末席に名を連ねるような立場ではありますが、理論と実践両面で事業再生の問題に通ずることができるよう心掛けたいと思います。